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今回は、利用がなかなか進まない食品廃棄物について、その理由と利用方向性について議論をしたい。
まずは食品廃棄物の排出、利用状況を見てみよう。(図1参照) 食品廃棄物はその発生には3段階、つまり製造、流通および消費があり、現在主に議論の対象となっているのは、流通の分野である。 すでに製造の段階においては、リサイクル率は約5割に上る。 また排出量も340万tと全体の約18%であり相対的に少ない。 一方、流通および消費においては、排出量が多くまたリサイクルもほとんど行われていない状況である。 流通と消費を比べてみると、流通の一排出者当たりの排出量は消費のそれに比べ大きいという傾向にあり、リサイクルの効率的拡大の視点からは、まずは流通を対象とすべきという結論に至る。 2001年4月に施行された食品リサイクル法も、この市場セグメントを主要な対象としている。
【 図1:食品廃棄物排出量とリサイクル率 】

現在外食産業やコンビニチェーンが、食品リサイクル法の施行を背景に、リサイクルの手段の検討を積極的に進めている。 この流通の分野におけるリサイクルの動きは、堆肥化、飼料化が中心であり、行政もこの分野での支援を中心に考えている。 しかし、現実的にはなかなかうまくいっていないのが現状のようである。例えば、日本マクドナルドでは、5年を掛け堆肥化の実験を行ったが、現実には塩分が多く、野菜はすぐ枯れてしまい使用に耐えないという結論に至り、現在飼料化やメタン発酵の検討へ方向転換をしている。また、ローソンでは1997年から他社に先駆け、コンビニの店舗にて発生する弁当や惣菜の売れ残りについて堆肥化などのリサイクルを行ってきているが、2000年度には全店舗の20%のリサイクル実施率も目標を掲げたが、実績は6.7%と目標値を大きく下回った。 同社では現状の契約農家(1,600以上)での堆肥などの利用を積極的に働きかけてきているが、堆肥の成分の安定性や塩分・油分の問題から、導入がなかなか進まないとのことである。
| ● 流通における堆肥/飼料化の根本的問題点 : 食品の特殊性 |
飼料化や堆肥化を中心に進められるのは、すでに製造において実績が存在するという理由の他に、廃棄物は付加価値の高い順にカスケード利用を狙うべきであるという考え方がある。 しかし、食品廃棄物の堆肥や飼料への利用が他の廃棄物例えば廃プラスチックと異なる点に、前者が最終的に食品という高度に品質管理が必要とされるものに使用されるということがある。 食品に高度な品質管理が必要とされる理由に二つある。 一つは、消費者は食品の安全性に対しては、極めてセンシティブであることであること。 二つ目に、食品はもはや空腹を満たすためのものではなく、食品は典型的な消費財であり、マーケティング上食品のイメージは極めて重要であることがある。 現状では、塩分や油分の問題など技術的な理由で、堆肥化・飼料化がうまくいっていないと理解されているが、仮に上の技術的な問題が解消されても、消費者はこれら二つの条件を満たさない食品には見向きもしない。
製造と流通とでは、これらの課題に対する対応のしやすさにおいて、根本的な相違が存在する。(図2参照) 製造においては、排出される食品廃棄物は比較的一定で拠点数も少なく廃棄物管理も品質管理もしやすく、加えてそれらの管理の体制も整っている。 しかし流通においては、種々雑多な廃棄物が排出される一方で、排出者当たりの排出量も小さく廃棄物・品質管理が難しく、かつ管理体制は、その規模や事業の形態から整備は困難である。 消費者は、この点を感覚的に理解している。
【 図2:製造と流通における排出食品廃棄物の廃棄物管理・品質管理の難しさの比較 】

| ● 流通における食品廃棄物リサイクルの成功事例をどう解釈するか |
しかし一方で、流通における食品廃棄物リサイクルの利用における成功事例として、ホテルの例がある。ホテルニューオータニでは毎日5tの生ゴミが発生するが、自社のコンポストプラントにおいて、堆肥を生産し、生産した堆肥を農家など販売している。 すでに、99年5月に稼動した同プラントの投資は回収していると言われている。
また、パレスホテルにおいては、自社から排出された食品廃棄物を堆肥として利用し、契約農家において米などを生産し、自社のレストランで使用するという、食品廃棄物の循環利用を実現している。
それでは、なぜこれらのホテルにおいては、食品廃棄物のリサイクルが成功しているのであろうか。それは、これら一流のホテルでは、品質に対するブランドがすでに確立しており、堆肥の利用者は安心してこれらホテルから排出される食品廃棄物から生成した堆肥を購入でき、またこれらホテルから排出された堆肥を利用した材料から作られた料理を安心して食べられることにある。これらホテルでは、当然のことながら排出食品廃棄物の分別などにおいて、その品質維持のために極めて厳しい管理を実施しているであろうが、それだけでは不十分なのである。
それらの行為を顧客に、信頼して納得させるもの、つまりブランドがなければならない。 こと食品に関しては、消費者は「地球環境に優しい」だけでは、絶対に購入はしない。 安全が100%確保されていると「確信」できなければ、言い換えると安全のことは意識しないで良いレベルでないと購入はしない。それだけ消費者は食品にはセンシティブなのである。
ならば、政府や業界団体が安全基準を作れば良い、という議論もあるだろう。 実際に、2002年には全国食品リサイクル協会が、生ゴミから生産した堆肥の品質について、自主的な基準を策定している。 しかし、狂牛病の問題を出すまでもなく、政府の信頼感は残念ながら高いとは言えない。 今の政府の姿勢では、消費者の信頼を得ることは不可能であろう。
また企業においても雪印のような例もあり、消費者の食品廃棄物由来の飼料や堆肥から生産された商品に対しては懐疑的にならざるをえない状況にあり、業界団体の作成した安全基準の消費者を納得させるという面での有効性は、甚だ疑問である。
食品廃棄物の食品への利用をうたう食品廃棄物の循環利用モデルは、循環型社会の理想的な形態の一つであると認識されており、あちこちで自治体などを含め導入検討されているが、以上のようにこのモデルは、食品の特殊性ゆえに、一部の特殊な例を除き機能しないと考えている。(図3参照)
【 図3:食品廃棄物の循環利用 】

| ● バイオマス利用促進の要諦 :「利用者のニーズ」 |
この食品廃棄物の食品への利用の問題点は、バイオマス利用全般に通ずる重要なポイントを示唆している。 バイオマスの利用に当たっては、その利用の必要性に迫られ、プロダクトアウト的思考に陥り、排出者、地域環境そして何らかの政策を通じてそれらのステークホールダーに影響を与える行政の三者を中心に物事を考えてしまう傾向がある。
そこには、ここで触れた食品廃棄物の食品への利用での問題点で見られるように、利用者や消費者の視点は希薄である。 現実には、利用者のニーズがない、小さいところでいくら政策や財政的支援を使用し無理に仕組みや製品を押し込んでも成功は覚束ない。 バイオマス利用拡大においては、この利用者ニーズ中心の視点が欠かせない。(図4参照)
【 図4:バイオマス利用を考える上でのステークホルダー 】

以上で、食品廃棄物の食品への利用は適当ではないという議論を行ったが、それではどのような可能性があるのであろうか。
(ポリ乳酸の生産)
現在、北九州市で荏原、オルガノなどが参加して、食品廃棄物から、生分解性プラスチックであるポリ乳酸を生成する実証試験が行われている。今後、カーギルダウやトヨタのポリ乳酸生産への取組の本格化から、ポリ乳酸の市場は大きく拡大すると想定される。しかしながら、これら企業の生産規模は極めて大きく、例えばカーギルダウでは14万t/年のポリ乳酸の生産を計画し、その規模を仮に食品廃棄物で換算すると140万tに上り、現在北九州で検討されている事業は、食品廃棄物処理費を収入に見込むというもので、ビジネスモデルとしてはカーギルダウ(原料;とうもろこし)やトヨタ(同;いも)とは異なるものの、これら企業とコスト的に競争できるレベルの生産規模を達成するためには、筆者の試算では対象地域は東京・京浜地区、せいぜい京阪神地区に限定されてしまう。
(バイオディーゼル)
揚げ物などに利用された廃油からは、バイオディーゼルを生産することができる。 すでに、京都市などにおいて市営バスの燃料などに使用されている。 また、バイオディーゼルはポリ乳酸などに比べ簡単なプラントで生産することができ、そのため比較的小規模なプラントでも利用できるメリットもある。 しかし、廃油はそもそも食品廃棄物の中の一部(流通での年間排出量は40〜50万t:日本政策投資銀行)であり、食品廃棄物対策の決定打には成りえない。
(メタン発酵)
メタン発酵は、すでに欧州において主要なバイオマス資源(家畜のふん尿が主体だが)の利用技術として広く普及しており、またメタンは天然ガスの主要成分であり、都市ガスの配管により、発生したガスを供給することも検討されているように、既存のインフラの活用も可能である。 さらに、メタンは本格上市間近のPEMタイプの燃料電池への利用も可能である。加えて、食品廃棄物のみならず、家畜のふん尿の利用も可能であり、また上で触れたポリ乳酸のように大規模の設備に限定されることなく(経済性確保のためには2万t/年程度の処理量は必要だが)適用範囲は大変広く、日本中での普及により、設備コストの低減も期待される。
よくバイオマスの利用において、「地域地域の事情に応じた最適な利用法」の追求が良いという議論があるが、大きな間違いである。 バイオマスの利用において日本全体のレベルでの「規模の経済性」の追求は、コスト高のバイオマスの利用においては、極めて重要である。 そのためにも、日本の公共事業においてよく見られる一品一品異なる設備の発注などの愚は、絶対に避けなければならない。
しかし、当然のことながらメタン発酵の問題点も存在する。 食品廃棄物は水分を多く含み、またそのため腐敗しやすくハンドリングが難しいことから、物流コストは大きくなる傾向にある。 食品廃棄物のリサイクルの場合、廃棄物処理費が主要な収入源になるが、その多くが収集運搬費であり、この収集・運搬を効率的に行わないと、経済性確保は難しい。
この部分をイノベーティブな方法により効率化している企業に、ベンチャー企業のエキシーがある。 詳しくは、本年4月号の記事を参照して頂きたいが、エキシーは、顧客の食品廃棄物の排出の現場に「サテライト」と呼ばれる密閉式の貯蔵タンクを設置し、スラリ状にした食品廃棄物を貯蔵し、タンクがいっぱいになるとタンクローリーにて回収し、発電センターに運びそこでメタン発酵をさせ、生成したメタンは発電に利用されるシステムを構想した。 この方法により、食品廃棄物のハンドリングが容易になり、また回収の頻度を大幅に減らすことができる。 現在東京都江戸川区に東京エコ発電センターと呼ばれる実証プラントを稼動させている。 ちなみに、エキシーには東芝やセブンイレブンといった有力企業がパートナーとして名を連ねている。
その他の問題として、メタン発酵をした後も、かなりの残渣が残り、本来は有用な液肥となるが、発生地域(都市部)と需要地域(農村部)が距離的に離れる日本においては、排水処理設備が必要となること。 また、廃棄物の種類により同一条件ではメタン発酵がうまくいかない場合もあること。 またある一定の滞留時間が必要であり、大きな消化槽が必要となることなどがある。 消去法的に見ても、食品廃棄物の利用の面では、メタン発酵以外に有効な利用法は存在しないと思われ、そのような認識の下、今後これらの問題解決に向けての集中的な技術開発や仕組みの構築が求められる。
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