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◆ 新規事業成功のためのWHATとHOW(2) ◆
前号に引き続き今月号も、新規事業の成功へ向けての取組みについて検討する。
前号の前書きにも書いたとおり、新規事業を失敗している企業は分野の選択(WHAT)に
原因があるケースよりはその進め方、取組み方すなわちHOWに問題が多いケースが多いので、
今回はHOWに焦点を当てて検討する。
まず新規事業の考え方であるが、改まって“新規事業”に取組みたいのでということで
“新規事業探索プロジェクト”を起こし検討するという取り組みが多くの企業で行われているが、
このような考え方よりも“新商品”と気軽に考えて、その売上げが増大して結果として事業と
してのまとまりを有する形になったもの、というような考え方で進める方が成功しているケースが
多いように感じられる。 新規事業というと、すぐに売上高100億円以上とか1000億円以上の市場規模
を有する事業とか考えやすく、その結果競合の激しい顕在化している市場に後追いで参入するケース
が多くなるからと考えられる。
次にポイントとなることに事業の規定の仕方もある。 すなわち、研究開発部門が新規事業を
検討する際に陥りがちなパターンであるが、事業を技術で規定してしまうことである。
事業の原点はと考えれば、“誰に”(ユーザー)“何を”(機能・価値)提供し、どのように
対価をいただくかということである。 こう考えても明らかなように、どのようにつくっている
かということは、ユーザーから考えた場合には事業を規定する基本要素には入らないのである。
ところが多くのメーカーにおいては自社技術の活用による新規事業展開を考えようとするために
まず技術が先に来てしまいがちである。 代表的な例が記録媒体事業である。 3Mがスコッチ
テープというビデオテープで市場をリードしていたことがあるし、花王がフロッピーディスク
事業で世界的に高シェアを誇っていながら、両者とも結果的には撤退せざるをえなかった。
多様な技術の開発が早いスピードで展開されつつある現在においては、一つの技術が市場を
リードできる時間がますます短くなっているので、競合技術の動向をよく考慮し機能として
事業をとらえる考え方が重要である。
既存事業と比べ新規事業を成長させることが難しいことの根底にある一大要素が人の問題である。
特に新規事業を推進しようとする経営幹部の存在である。 新規事業を成功へ導くためには3人の
核となる存在が重要であることが成功した企業の例から導き出されている。 著者はこのような核
となる存在をチャンピオンと呼んでいて、3人をそれぞれテクニカルチャンピオン、ビジネスチャンピオン
そしてエクゼキュティブチャンピオンと呼ぶ。 前2者は読んで字のごとく技術面の中心になる存在であり、
ユーザー開拓、企画など事業推進する存在である。 この中で新規事業ゆえに特に重要な存在がエクゼキュ
ティブチャンピオンである。 新規事業が既存事業と異なり、育てることが難しいのは投資と回収の
時間的ずれが大きいからである。 そこでこの間、実行部隊が社内からの雑音にくじけることがない
ように擁護し励まし続ける経営幹部の存在が重要であり、その存在がエクゼキュティブチャンピオン
なのである。 新規事業を育てられない多くの企業においてこの存在が欠けているケースが少なくない。
また最初にも述べた新規事業と肩肘張らずに新商品の延長と考えた方が成功しやすいというのも、
既存事業のような形で展開することができ、その事業の担当役員というような形で無意識な形でエクゼキュ
ティブチャンピオンが明確になっていることになるからとも考えられる。 技術部隊が新規事業を開発
する際にはその事業に理解のある経営幹部を見つけ出し、何とかしてエクゼキュティブチャンピオンとして
機能していただくような努力が重要である。
エクゼキュティブチャンピオンが重要であるのも、実は新規事業は当初は社内における存在感のない
事業であるからである。 事業を成功させるためには2つの意味における存在感を確立することが重要である。
社内と社外である。 社外の存在感はすなわちマーケットシェアのことでこれは新規事業に限らず重要であるが、
新規事業においては社内における存在感を早期に確立することが重要である。 社内において存在感のある
事業であれば、困難に出会った際には、会社としてどうするかが議論されることとなるが、存在感のない事業で
あれば早く撤退しろ、という後ろ向きの力が働くことになりやすい。 よってこの時にエクゼキュティブ
チャンピオンが重要になるのであるし、正の増殖機能を回転させるためにも早期に社内の存在感を確立する
ことが重要なのである。これまでの経験からいうと、売上高:100億円もしくは全社売上高の10%というのは
一つの目安になりそうである。 ここでポイントは売上高であり利益ではない。
売上高と利益という事業としての評価の話しになったが、これも無視できないポイントの一つである。
よく“3年目で単年度黒字”“5年で累積損失解消”というがこれは両方とも、利益を指しているのであり、
新規事業をうまく育てるための当初の評価指標としては適切ではないと考えている。 理由は先に述べた
ように、まず社内・社外の存在感を確立することが新規事業にとって重要であり、そのためには売上げ規模
がポイントとなる。 存在感ができた後に利益に移行することが望ましい。 また売上高、利益ともに絶対値
と変化を使い分けることも大切である。 最初は変化次に絶対値とすることが望ましい。 さらにいえば、
評価は絶対的な数値で考えるのではなく当初の計画との比較で進めることも重要なことである。 こう考えると
“3年タンクロ・5年ルイソンカイショウ”という指標では新規事業はうまく展開できないことは多分間違いない
であろう。
最後にこのような難しい新規事業展開の推進部門として期待されることの多い技術部門としては、
事業開発という視点から今日では技術だけではなくビジネスモデルの検討まで必要になっていることも
忘れてはならない。
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